SAVE JAPAN プロジェクト 2015

レポート

トチノキの魅力に触れて森の命の鼓動を感じよう!

2015年09月12日(土)実施
  • その他植物
  • 森林

レポート

トチノキ巨木の森は沢沿いにあります。そこまでの道のりは山の豊かさとともに鹿の食害などの厳しさを感じさせてくれました。伐採された巨木の残骸が今も無残に取り残されている現場を通り、大きな切り株に乗って、今も残る巨木の価値を改めて知りました。童心に戻って鹿に食べられなかったトチの実をたくさん拾うひとときを楽しんだ後、トチ餅の作り方を教えてもらって食材としてもトチノキが重要な存在であったことを学びました。

当日のスケジュール

10:00 高島市朽木中牧山村交流館「山帰来」集合 受付開始
       バスを利用の方は10:15到着
10:30 あいさつ、スケジュール・注意事項説明
10:35 バス乗車 入山口へ
10:55 岩島谷入り口到着、登山開始
12:00 トチノキ巨木到着
     昼食休憩
     トチノミ拾い
12:30 下山開始

13:30 入山口到着 トチノキを守る運動の経緯とトチ餅作り方説明
14:00 バス乗車
14:20 山帰来到着 休憩
15:00 解散
       バスを利用の方は安曇川駅16:00着

実施内容

集合地 山帰来(さんきらい)

台風も行き過ぎて気持ちのよいお天気となりました。JR安曇川駅からバスに乗った方と、直接自動車で集まった方とが、集合地交流館「山帰来」(高島市朽木中牧山村)で合流しました。

バスから降りて登山開始

集合地から全員でバスに乗り、少し道を引き返した登山口で降りました。ここからトチノキの巨木目指して登山開始です。

熊の食害

いきなり、幹がむきだしになっている杉の木がありました。熊の仕業だということです。

植林された森の中。杉の木の幹にはビニールのひもが巻きつけられている。

植林された森の中。たくさんの間伐された木がそのまま転がっています。そこに緑色の苔が生えて、まるで抹茶を振りかけてあるかのようにきれいです。
幹に巻いてある紫色のビニールのひもは、食害防止の対策です。これがないとさっきの木のように皮をむかれて枯れてしまうのだそうです。

伐採されたトチノキ

沢を何度も渡りながら谷川を見下ろす斜面の細い道を登りました。途中で、巨大な丸太が無造作に寄せ集められ、ブルーシートがかけてありました。これがトチノキ伐採の痕跡でした。朽木の山奥のトチノキの巨木は一度伐採されたことがあるのです。

最も太くて価値の高い部分だけを輪切りにすると、周囲の木もなぎ倒してヘリコプターで吊り下げて運び出すのだそうです。そして残りのトチノキはほったらかしにされているのです。長い枝も太い胴回りも、価値が低いのでしょう、沢にひっかかっていたりそのへんに重ねられていたり。その痛ましさには胸を打たれました。
人里離れた山奥で、知らないうちに伐採が進行しようとしていたのです。それに気づいた巨木と水源の郷をまもる会の皆さんが、まず調査し、世論に訴え募金を集め、訴訟を戦ってそれ以上の伐採を食い止めたそうです。

トチノキ巨木の根元に登る

トチノキが生えている場所に着きましたが、この木よりも、もっと大きな木がある、と更に沢沿いをさかのぼりました。
そこには本当にみごとなトチノキがそびえています。カメラをタテにしなければ、とても上まで写すことができません。というわけで、写真は横になってしまいます。見にくいですが顔を横にしてご覧ください。


トチノキの巨木

太い幹の中にはウロが空いています。
表皮にはびっしりと苔がついていました。苔の上には小さな蟻や虫たちが歩いています。こんなに古い木なのに生命に満ちあふれていました。

土地の持ち主さんのお話

このトチノキを背にしながら、土地の持ち主である清水さんがお話してくださいました。50年ほど前、清水さんのご両親はこの場所で炭焼きをして生活しておられたそうです。よく見るとトチノキの手前には炭焼きの穴がそのまま残っていました。また、すぐ下の斜面にはクズ炭が捨てられているのが今でも確認できました。昔はこの山奥が社会を支えるエネルギーを生み出す場所だったことの証です。

チチノキの前で記念写真

トチノキの巨木といっしょに記念写真。スケールの大きな構図になりました。

昼食風景

少し降りたところにあるトチノキの下で昼食タイム。思い思いの場所でお弁当を食べました。
ピンクのビニールひもが張り巡らされているのは鹿除けのためです。鹿はトチの実も好物で食べてしまうため、鹿がいやがりそうな高さに張ったのだそう。さて、鹿除けの効果はいかに?

トチの実あった

トチの実、見つけた!中に栗のような実が入っています。

トチの実探し

みんなで鹿になったつもりで地面に落ちているトチの実を探しました。

トチの実拾い

沢の水の底に沈んだ実は、さすがの鹿も食べないそうです。長靴の人は沢に入って拾っています。
しばらく拾って、だいたい探し尽くしたと思われたところで下山を開始しました。拾った実をあとで数えるのが楽しみです。

実を拾った場所から少し下ったところから見えたのが、大きな切り株です。

トチノキの切り株

まるで沢に張り出した岩のように見えますが、何年か前に伐採されたトチノキなのだそうです。人が何人も乗れそうな広さがあり、びっくりしました。

切り株

トチノキ巨木が一本伐採されると、ぽっかりと100㎡ほどがあいてしまうそうです。空が見え明るい空間が、トチノキが広げていた枝葉の広さを表しています。残された枝が沢にひっかかって積み重なっていました。

トチノキ葉

トチノキの下に落ちていた葉っぱです。葉は7枚セットで1枚の葉なのだそう。

バスを待ちながらトチモチの説明

下山が予定より早かったため、バスが迎えに来るまで道端でトチ餅講座が始まりました。トチの実は手間暇かけてやっとお餅に加工できます。みなさん真剣に説明を聞いていました。

拾った実を数える

バスに乗って帰ってきた山帰来の前で、それぞれ拾った実の数を数えました。自分のものになるわけではありませんが、なぜかとても充実した気持ちになれます。

トチノキ祭りのお知らせ

数を数えたら実を全部集めて集計しました。その総数は、なんと1900個越え!鹿に食べられなくてよかったですね。
山帰来の中に入って、巨木と水源の郷をまもる会の小松さんから10月に行われるトチノキ祭りのお知らせを聞き、アンケートにご協力いただきました。
手前のテーブルでは、トチノキの蜜を売っています。栃蜜です。独特の風味があり、山奥の巨木を思い起こす甘さです。

少し予定よりも早い時間でしたがここで解散。バスで来た人たちはバスに乗って安曇川駅まで1時間揺られ駅でお別れしました。

お天気もよく気温もさわやかでトチノキの巨木に会いに行くには理想的な日となり、本当によかったです。ご参加の皆さん、巨木と水源の郷をまもる会の皆さん、お疲れ様でした。



このイベントで得られたこと

山奥の細い道を登り源流を守るトチノキの巨木に出会うことで、山を保全することの大切さを実感できました。また、トチの実を拾って加工の手順を教えてもらい、昔の人の大切な食料だったことを身近に感じることができました。

参加者の声

  • 緑の中を川端を歩きながら巨木にたどり着きました。主催者の方々の保全の努力に感謝します。ルートもお昼を食べた所も栃の実拾いも良かったです。
  • 栃の木の巨木が見ることができた。トチの実を拾うのが童心に返って楽しかった。
  • 大変立派なトチノキと会えて良かったです。森もとても気持ちよかったです。
  • 丁寧な説明で環境保全に熱心に取り組まれているのがよくわかりました(トチの実拾いが面白かった)
  • ふだん行けない山に入って巨木の観察ができ、感動しました

イベント実施結果

参加者数
23名
アンケート回答数
23名
参加者満足度
69.5%
実施してよかった点
前回とは違う場所のトチノキを観察したので、途中で伐採の痕跡を見ることができました。話には聞いていましたが、うち捨てられたトチノキを実際に見ると、今こうして巨木が生き残っていることが当たり前ではないと感じることができました。
実施して苦労した点
トチノキが人里離れた山の奥にあるため、道が険しく危険な箇所もあります。そういう場所を歩くことを事前に周知し、参加者に十分な装備をしてもらい体調にも注意してもらいました。前回は体調が悪くて途中で引き返す人がおられましたが、今回は無事全員が歩き通せました。
特に寄付が活きたと感じた点
今回もJRの駅から集合場所までのバスを走らせることができ、そのために自動車利用しない方もたくさん参加していただけました。また、集合場所から登山口までの移動にもバスが活躍してくれました。