高梁川上・中流域の環境保全と暮らしを学び・体験しよう!4 ~淡水魚の観察~
レポート
岡山県総社市に位置する岡山県立大学の講義室をお借りし、岡山県内の淡水魚に関する講義を伺いました。高梁川流域は全国的に見ても淡水魚が豊富に生息する環境であると言われていますが、その中でも「スイゲンゼニタナゴ」の生息調査および保護・増殖に取り組まれる講師より、その活動内容とスイゲンゼニタナゴの生態について解説をいただきました。
スイゲンゼニタナゴは河川改修等による生息環境の変化のほか、外来種による捕食、愛好家や鑑賞魚の業者による乱獲が原因となり、その数を減らしています。現在環境省レッドリストにおいて「絶滅危惧1A類」に指定されているほか、「種の保存法」の希少野生動植物種の指定を受けており、許可を得た場合を除き、捕獲や譲渡、飼育などが禁止されています。また違反した場合は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が定められています。
講師からは、2006年に廃校(岡山県立矢掛高等学校へ統合)となった岡山県立矢掛商業高等学校でのスイゲンゼニタナゴの保護活動に関する紹介のほか、同校内で造成された繁殖実験施設における産卵の様子の記録映像など、貴重な資料を交えてその生態について紹介をいただきました。
▼講師による岡山県内の淡水魚と、スイゲンゼニタナゴに関する解説。
続けて大学近くを流れる水路へ移動し、実際に高梁川流域へ生息する淡水魚の観察を行いました。
▼講師が川から淡水魚を上げてくださいます。
▼解説を伺いながら、特徴的な生物を参加者がそれぞれに写真へ納めていきます。
▼淡水魚の「カネヒラ」。繁殖期で鰭がピンク色に染まっています。

タナゴ類はこれらの貝の出水孔から産卵管を差し入れ、貝の中に産卵します。淡水魚を保全するためには、まず貝類が生息できる環境をつくることが必要となります。ひとつの希少な生物のみを切り取って保護することはできません。その生物の生息環境、食べ物、産卵できる条件など、さまざまな要因が重要となってくることを、参加者全員で確認しました。
当日のスケジュール
10:00 集合・開会式
10:15 高梁川流域淡水魚についての講義
講師:岡山市立後楽館高校 室 貴由輝 氏
11:05 質疑応答
11:15 休憩
11:25 保全対策の取られた水路を観察しながら移動
11:45 淡水魚生息観察
解説:NPO法人倉敷水辺の環境を考える会 代表 青江 洋 氏
12:40 集合写真、閉会式
12:45 終了、解散
実施内容
このイベントで得られたこと
参加者の声
- 保全、保護活動の参考になりました。(40代男性)
- 初めて見た魚や初めて知った魚などを知ることができたから。あと、希少生物種をどうやって増やしていくか、そのための自然環境について分かったから。(10代男性)
- スイゲンゼニタナゴをはじめとした希少な生物の名前や特徴を知り、そのおもしろい生態が私をワクワクさせたから。(10代男性)
- 自然や魚に対する知識が増えたから。珍しい魚を見ることができた。魚が少し好きになった。(10代女性)
- 室先生のお話と魚を見たことで知識が増えた。(10代女性)
イベント実施結果
- 参加者数
- 10名
- アンケート回答数
- 9名
- 参加者満足度
- 56%
- 実施してよかった点
淡水魚の保全活動実績を持つ矢掛高校(矢掛商業高校を併合)に在席する高校生が参加してくれました。今回の参加者は1年生であり、自分の在学する高校の取組みについて知らない状態での参加であったため、これまでの活動について伝え、大切さを確認する機会となりました。
- 実施して苦労した点
- 愛好家や鑑賞魚の業者による淡水魚の乱獲を防ぐため、イベントの開催案内時点で集合場所を公開しないという方法を取りました。「多くの方に自然へ親しんでほしい」というイベントの趣旨と、「生物の生息環境の保護」という目的の両方を達成するために、協力団体を交えた話し合いや、開催時の配慮を重ねました。
- 特に寄付が活きたと感じた点
事前に関係機関との打ち合わせを行うことができたほか、保護活動に取り組む協力団体へ適切な謝金をお支払いすることができました。