SAVE JAPAN プロジェクト 2017-2018

レポート

「ツキノワグマと人間の共生 ~里山の生態系を守ろう!~」シンポジウムin長岡

2018年10月07日(日)実施
  • ほにゅう類
  • 森林
  • 里山

レポート

国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種(VU)に指定され、環境省のレッドリストにも掲載されている日本各地で生息するツキノワグマ。
近年では、生息環境の変化により中山間地域での目撃件数や人身被害の問題も深刻になっています。
今回、新潟県では野生鳥獣の生息調査及び被害対策の支援活動に取り組むNPO法人新潟ワイルドライフリサーチと協力し、ツキノワグマをはじめとした野生鳥獣との共生を考える環境保全イベントを開催しました。

10月7日はツキノワグマを取り巻く現状や鳥獣対策をテーマとしたシンポジウムを開催。
地域住民、行政、NPO等などから約50名が参加し、希少生物の保護や地域の環境保全について考えました。

当日のスケジュール

13:00 開会・趣旨説明
13:10 講演
①「新潟県のクマの出没と被害の状況について」
NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ 会長 山本麻希
②「新潟県におけるクマの分布状況と生息状況」
NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ 副会長 望月翔太

休憩
14:30 事例紹介
①「島根のクマ事情~住民感情と法律の狭間に揺れる担当者の苦悩と努力~」
島根県県央県土整備事務所 大谷浩章
②「軽井沢町における、ツキノワグマと人間の共存に向けた取組み」
NPO法人ピッキオ 大嶋 元
③「小諸市の錯誤捕獲の現状と課題」
小諸市役所 竹下 毅

休憩
16:15 パネルディスカッション
17:30 閉会

実施内容


まず始めに、NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ会長の山本麻希さんが、県内のツキノワグマの生息状況や生態について解説しました。

その後、ツキノワグマと人間の共生を目指す取組みとして、島根県や長野県の軽井沢町と小諸市の事例を学びました。
島根県の事例は学習放獣に対する住民の理解や信頼を得るまでの工夫と現場対応について、長野県の事例は軽井沢町で導入されているベアドックと呼ばれる犬を活用した学習放獣、小諸市での錯誤捕獲の現状と行政の取組みについてです。

最後に事例発表をした登壇者全員でパネルディスカッションを行いました。
・捕獲作業及び業務に関するコストはどれくらいなのか、また労力はどれくらいか
・市街地に出没した場合の対応について
・放獣する場合は、その場がいいのか、遠方がいいのか
上記テーマについて、会場からの質問も交えながら活発な意見交換が行われました。

会場内に展示したツキノワグマのはく製。

最後に参加者で集合写真。

このイベントで得られたこと

新潟県におけるクマの生息状況、共存に向けた課題等を学ぶことができた。
・中山間地域の人口減少や気候の変化により、クマの出没件数が増加したり、人身被害を出す新しいタイプのクマが出てきてしまっている。
・クマはとても賢いので、里山の整備や適切な学習放獣を行えば被害を少なくしていける。

参加者の声

  • 新潟にこんなにツキノワグマが出没すると思わなかったので、すごくびっくりしました。 今まで他人事でしたが、今回参加して身近な事なので共存についてしっかり考える必要があるなと思えました。
  • 地域によって取組みの違いがあることがわかった。 ただ殺処分するのではなく、共生できる効果的な方法があるとわかった。
  • 今までクマの捕獲についてほとんど知りませんでした。 自治体がどんな対策をしているのか、実際の映像などを見れてとても勉強になりました。
  • クマの毛をさわったこと、ビデオがおもしろかった。

イベント実施結果

参加者数
49
アンケート回答数
43
参加者満足度
82%
実施してよかった点
・「ツキノワグマと共生」について、若い世代に関心を持っていただけました
・他県の様々な事例を学べました
・現在、新潟県ではツキノワグマを放獣することはできないが、他県の学習放獣等の事例を聞き、あらためて行政(県、長岡市、周辺自治体)、地元自治会、新潟県猟友会などが検討していくきっかけをつくることができました

実施して苦労した点
・7日はシンポジウムのみでフィールドに出れなかったため、参加者(特に子ども)の関心が薄れてこないよう注意した。
 また、一般参加者(地域住民)も多かったため、専門的な内容になりすぎないよう配慮した。
→講演者や事例発表者も、動画を交えながら話すなど、工夫をしていただいた。
特に寄付が活きたと感じた点
・長岡市という中心市街地と、近隣に里山がある(実際に野生鳥獣の被害を受けている)地域でイベントを開催することができました
・長岡市内の小学校(約20校)の児童へチラシを配布することができました
・学習放獣の先進地である島根県、ベアドッグを導入している長野県などから講師を招くことができました
・若いスタッフのみなさんに参加していただけました。
(実施団体も、普段同様のイベントを開催するときの参加者層と異なり驚いていました。同時に、若い世代に知ってもらえることを喜んでいました)

メディア掲載

・10月15日(月)発行/上越タイムス「NPOPRESS」
・朝日新聞(長岡支局)さんが取材に来てくださいました
主催・共催
NPO法人新潟ワイルドライフリサーチ
NPO法人くびき野NPOサポートセンター
協力・後援等
新潟県、長岡市、長岡市教育委員会、公益財団法人こしじ水と緑の会、生物多様性保全ネットワーク新潟
協賛
損害保険ジャパン日本興亜株式会社