SAVE JAPAN プロジェクト 2021-2022

レポート

11/20(日)「晩秋の蒜山もおもしろいよ!秋の草原保全活動 防火帯の草寄せ &"茅"の収穫体験」

2022年11月20日(日)実施
  • その他植物
  • 湿原
  • 種子植物・シダ
  • 里山
  • 高原

レポート

茅刈と一緒に実施したことで前年比、4倍以上の44名の参加者でした。
参加者の所属や年代、居住地域も様々で多様性に富み、これ迄以上に関心の広がりがあることも感じられました。
午前中の山焼きのための防火帯づくり作業を通して、牛と共に暮らしてきた人々の伝統的な生活様式の理解と、地域の生物多様性の維持につながることを体験。午後のすすきヶ原での茅刈り、束づくり体験と束を利用した屋根葺きの見学は、暮らしと自然、産業の関わりの理解を深めることに繋がりました。

当日のスケジュール

07:45     岡山駅西口バス乗り場集合
08:00     岡山駅西口バス乗り場出発
09:30     道の駅「風の家」着(トイレ休憩)
09:45     チェーン脱着場移動、参加者受付
10:00-12:00   作業場所移動、防火帯草寄せ作業
12:00-13:00   茅場近くに移動してお昼休憩(ひるぜん焼そば、しし汁、おにぎり)
13:00-14:30   茅刈、束ね作業
14:30-15:00   休憩及び茅葺構造の解説
15:00-    仕上げ作業(島立て)、まとめ
16:00     集合場所に到着、解散
16:15     道の駅「風の家」トイレ休憩後出発
18:00頃    岡山駅西口バス到着

実施内容

雨天延期から1週間後の2022年11月20日。
曇り予報の中、穏やかな秋晴れの蒜山高原で山焼きの準備作業が始まりました。
今回は茅刈と一緒に実施したことで、前年から比べると4倍以上の44名の参加者です。
参加者の所属や年代、居住地域も様々で多様性に富んでいました。
下は3歳から上は60代後半まで、岡山県民の参加が中心でしたが、広島、兵庫、鳥取と隣県からの参加もありました。
中心となる蒜山自然再生協議会や真庭市地域おこし協力隊の他、地元の蒜山茅刈出荷組合、グリーナブル蒜山、真庭市蒜山振興局、株式会社くさかんむり、岡山NPOセンターなどの関係団体に加え、家族連れや個人そして海外留学生も含む大学生グループと多岐にわたりました。

開会式と作業前のミーティング

最初に、午前中に行う山焼きのための防火帯づくりの意味と作業方法、役割分担についての説明が主催者よりありました。
地元の人々の手によって長らく行われてきた草原の維持は、牛と共に暮らしてきた人々の伝統的なスタイルでしたが、機械を使った農業やライフタイルの変化により、手が入らなくなり、そこに毎年のように咲いていたサクラソウなどの植物も減少の一途をたどり、絶滅の危機に瀕するようになりました。
この景観を維持することは、動植物の生物多様性を保つだけでなく、私たちの持続可能な暮らしを考え、体験する貴重な機会です。

それだけに、多様な立場、地域、年代の人々が初顔合わせながら、力を合わせて急な斜面で事前に刈られた草を寄せて防火帯をつくる作業は、機械がなかった頃の先人たちの暮らしに思いを馳せるものとなりました。


急斜面を登って作業を行います


足元に注意をして草を集めます

中国地方の最高峰「大山」を背にして二手に分かれ、それぞれ幅4mほどの防火帯を作っていきました。
熊手で草を寄せ、フォークで草を撒く、草と言っても笹もあれば、栗の小木の枝も茅など様々な植物があり、一搔きごとに力のいる作業です。
小石の除去も作業の安全確保に欠かせない重要な作業です。
斜面で足を踏ん張りながら、マスクを着けたまま黙々と作業する姿は、知らず知らずに参加者間の無言の連帯感を生んでいました。

作業後の充実した笑顔の記念撮影 背景に大山

小高い丘の頂上に着き、振り返ると勇壮な大山の景色。大山をバックに記念撮影。
振り返ると自分たちが作った防火帯がきれいな道となっていました。雪が解け、春になると山焼きです。
この山焼きこそが新たな生命の息吹の元となります。

お昼には、地元の名物ひるぜん焼そば弁当としし肉(猪)の入った味噌汁をいただきました。
秋のすすき野を見ながらの昼食はからだにしみる美味しさです。


地元の猪肉はとても美味でした

午後からは、すすき野が作業フィールドです。
神戸市から参加されている「株式会社くさかんむり」のお二人が講師となり、自己紹介ならびにすすきの刈り方、束ね方を指導していただきました。 
お二人は、茅(すすきを刈って束ねたもの)の屋根を葺く職人さんです


すすきを刈った後の束ねの作業が重要

説明の後、皆で鎌を持ちすすき野に入り、すすきを刈っていきました。
すすき以外の植物が入ると茅として使えないことや、短いものや曲がったものもダメであることなど、注意しながら作業を進めて行きました。

すすき以外の植物が入らないように刈っていきます

1時間ほど作業を進め茅の束が沢山出来た頃、休憩を兼ねて 茅葺屋根の作り方を見せていただきました。
事前にトラックに屋根を作ってありました。そこにどのようにして茅を並べ、固定し、整えていくかのデモンストレーションです。
なかなか見られない作業で、特に海外からの留学生たちはとても興味深くそれを見つめていました。


並べた束を複数の道具を使って整えて屋根にします


はさみで溝を伐り込み 水はけを良くします


茅立て作業 束を12本以上重ねます

最後に茅を乾燥させるための茅立てを行いました。ちなみにこの茅束は一束1200円で売買されているそうです。
稲刈りが終り、雪が積もるまでの間の蒜山地域の貴重な収入源となることが期待されています。
立てた茅束をバックに記念撮影 みんなの力の結集の成果です。
自然と共に暮らすことの意味合いを作業で体験し、生物多様性にもつながることを感じた1日でした。

このイベントで得られたこと

幅広い年代層に草原の自然を利用したライフスタイルを経験してもらい、同時にそれが地域の生物多様性の維持につながっていること、また、なりわいの一部にもなりうることを知ってもらう機会の提供ができました。

参加者の声

  • 生物の希少化には過去の人の行いが衰退したことに起因するものがあることを実感しました。個人の観察だけでは獲得できない経験・知識を獲得することが出来たため大変満足できた。(20代学生)
  • 主催者によるプレゼンテーションと、おもてなしが最高だった。(20代学生)
  • 蒜山の美しい風景が印象的でした。草寄せや茅刈り・茅束ね作業を実際に経験して、草原管理の大変さを身をもって感じれていい経験が出来た。(30代会社員)
  • 主催者、特に重井植物園園長の解りやすいご説明から、新しい知識や視点が得られたこと。傾斜地において実際に作業をしたことで、山を守ってきた・守っている人々への感謝が増した。(40代会社員)

イベント実施結果

参加者数
44名
アンケート回答数
17
参加者満足度
94%
実施してよかった点

防火帯づくりと茅刈を一緒に実施出来たことで、普段体験する機会がない作業を提供できたこと。
プロフェッショナルにより茅葺屋根の作り方を見てもらえたこと、ならびに地元の特産の料理を参加者に提供できたことで、参加者も参加しやすくなったのではと考えます。また、地元を中心に多くの組織が関わって実現できたことは、今後の継続開催に希望が持てます。

実施して苦労した点
事前説明会の広報・集客、晩秋の蒜山地域の天候とイベント日程の調整が大変でした。
初体験、初顔合わせの参加者が多い中、見知らぬ同士の共同作業に関する安全管理も注意を払いました。
特に寄付が活きたと感じた点

主要駅である岡山駅からのボランティアバスの運行は、交通の面でのハードルを下げることができ、結果として県内外からの参加につながりました。また、40名を超える参加者全員に作業道具をもれなく提供できたことは作業の効率アップにも繋がりました。

主催・共催

真庭市・蒜山自然再生協議会・蒜山茅刈出荷組合・山焼き隊・重井薬用植物園

協力・後援等
特定非営利活動法人 岡山NPOセンター
協賛
損害保険ジャパン株式会社