SAVE JAPAN プロジェクト 2017-2018

レポート

戸隠古道からいきものの回廊(みち)をさぐる

2018年06月24日(日)実施
  • はちゅう類
  • ほにゅう類
  • 両生類
  • 昆虫・その他
  • 森林
  • 種子植物・シダ
  • 高原

レポート

 「戸隠五社」を巡りながら植物や野生生物の生息環境を学びました。野生動物と地域の文化や伝統との関係に視点をあて、人間と野生動物の共存を考えるキッカケのプログラムでした。また参加者の皆さん同士が交流し、楽しく、美味しい企画となりました。

>宝光社の狛犬前で記念撮影

当日のスケジュール

◎ 9:00~9:10
 開会あいさつ&戸隠の動物トピック

◎ 10:10~11:40
 戸隠古道散策(女人結界碑〜越水ヵ原〜女人堂跡〜中社〜伏拝堂〜神道・宝光社)

◎ 11:40~12:30
 「宝光社」で動物の”痕跡探し”

◎ 12:30~13:30
  昼食とまとめ

実施内容

戸隠の動物トピック>
写真
ecology&eco-lives信州の荒井代表から、最近の戸隠自然園では真夜中はイノシシが勢力を伸ばし、ツキノワグマが朝夕の活動になっている、その結果、訪問客からの目撃通報が増えている実態を説明しました。


 
<戸隠古道散策>
 戸隠古道を歩いて戸隠五社のうち「中社」、「宝光社」をめぐりました。

1 戸隠はもともと山岳信仰に聖地。しかし女性は奥社までの参拝は禁じられていました。そのことを示す「女人結界碑」から散策スタート



2 古道沿いで探してほしい「植物」の写真(名前は一部シークレット)リストを手に散策。何やらすぐに探しだしましたよ。


  
 花だけでなく茎も葉もすべてが白い植物を発見。ギンリョウソウです。光合成を行わずに菌類と共生して生きる「腐生植物」です。


 大きな葉っぱは高原の春を可憐な姿で彩る「水芭蕉」 この実をツキノワグマが好んで食べます。



3 一列に小さな穴が並んでいるササの葉を発見。筒状に丸まって出てくるササの新芽がまだ開かないうちに虫に食べられた跡が、葉が開いていったときに列状に連なった食痕として残るものです。戸隠神社「九頭龍社」の御祭神である九頭龍大神(くずりゅうのおおかみ)は、古来より水を司る神様であるとともに、虫歯の神様としても祀られています。戸隠神社では、これを「九頭龍さまのお歯形」として、虫歯予防のお守りにしています。



4 「比丘尼石」といわれる大きな岩が横たわっています。女人禁制を犯し、結界から先に足を踏み入れた比丘尼が、みるみるうちに身が硬直し、どんどん石に変わっていったという「伝説の岩」こんなところにも戸隠の自然と文化の関わりがありました。
 https://www.togakushi-jinja.jp/about/history/myth04.php#myth



5 中社に到着。鳥居近くに正三角形に並ぶ伝説の「戸隠の三本杉」があります。戸隠森林植物園ボランティアの会のガイドさんからその「お話」
 https://www.togakushi-jinja.jp/about/history/myth06.php#myth

6 観光客があまり通らない「神道」を進むと「伏拝所碑」に到着。戸隠神社への参拝者のうち、坂を登れない老人や、女人禁制で奥院に参詣できない女性たちが、ここで戸隠山や奥院を遥かに望んで”伏し拝んだ”ところだといわれています。
 同じ場所に「NHK小鳥の声放送記念碑」がありました。昭和8年(1933)、NHK長野放送局が日本で初めてここから野鳥の鳴き声を全国に中継した場所。戸隠が野鳥の宝庫であることが全国に知られるきっかけとなったそうです。

 


7 戸隠奥社までの参拝道を今回は逆にたどりました。古道脇には木々が多く残り、動物にとっても餌など求めて移動する「回廊」にもなっているとスタッフから説明がありました。


<動物の”痕跡探し”>
 ムササビが使っている樹洞も観察しました。出てきてくれないかと皆さん「スコープ」を覗いてワクワク。昼間だったのでやはり寝ているのか、姿は残念ながら見えませんでした。

古道のすぐ脇で見つけた「イノシシ」が餌を見つけ掘った跡。動物の痕跡は観察次第であちらこちらあるようです。

<昼食とまとめ>
 昼食は宿坊の越志旅館さんで戸隠名物のそばもついた精進料理。とても美味しいものを食べながら、プログラムの中で楽しかったことや気づいたことなどをみんなで話しながら、今日の発見を共有しました。

このイベントで得られたこと

戸隠古道を歩いて、戸隠の歴史や文化について学ぶとともに、里山から奥山にかけてどのように環境が変化するのか、どのような植物がどのように生息しているのかを実際に観察しました。イノシシやツキノワグマなどの生態と人との接触のついての課題等にも目を向けました。
戸隠自然植物園ボランティアの会や戸隠宝光社宿坊などの協力を得ながら、多岐にわたるプログラムにより、戸隠高原の自然や文化の「奥深さ」を感じてもらいました。

参加者の声

  • 自然の中をゆったりと歩くことができ、またとちゅうでお話もお聞きしながら興味深く素敵な時間を過ごさせていただきありがとうございました。(40代女性)
  • いろんな植物を見られました。散策はちょうどいい距離でした。(20代男性)
  • 戸隠の知らない知識、道があり、とても楽しかったです。(60代男性)
  • 普段の自然の中では植物や生き物の声が気持ちよかったです。(中学生)
  • 動物(ムササビ)の巣を見たことが楽しかった。(幼稚園)

イベント実施結果

参加者数
26人(子ども4人、大人22人)
アンケート回答数
26人(子ども4人、大人22人)
参加者満足度
77%
実施してよかった点
コース設定の検討に時間がかかりました。戸隠古道を歩き、観察をしながら、最後は昼食をたべるという「楽しく、時間もゆったり」したコースづくりはイベントの成功の鍵となりました。
実施して苦労した点
昼間なので、夜行性の動物のリアルな姿が見せるのがやはり難しかったです。姿が見えなくても、痕跡から生態を想像してもらうました。
特に寄付が活きたと感じた点
寄付のしくみを利用して、他のNPO法人、戸隠宿坊との協働を作れたことが良かったです。
主催・共催
共催 :NPO法人ecology&eco-lives信州
    長野県NPOセンター  
協力・後援等
●協力 : 一般社団法人 戸隠観光協会
    NPO法人戸隠森林植物園ボランティアの会
    北野美術館戸隠館
    日本NPOセンター
協賛
損害保険ジャパン日本興亜株式会社