三方湖のヨシ刈りチャレンジと食べもの体験!!
レポート
幻の魚「ハス」に思いをはせながら、その水質を保つための「ヨシ刈り」と、地元の恵みを味わう欲張りな体験会でした。
当日のスケジュール
9:00 開会あいさつ
~スタッフ紹介
9:15 自然観察棟に移動
~三方五湖と生きもの、
ヨシ刈りと伝統漁法、
里との関わりのお話
9:50 ライフジャケット装着
~活動場所に移動
~ヨシ刈りチャレンジ
10:45 ヨシ刈り終了
~観察棟1F和室に移動
~湖魚と漁のお話
~湖魚のお料理試食
~振り返りとアンケート
11:50 集合写真~閉会~解散
実施内容
2月ももうすぐ終わりのこの日、寒波の揺り戻しで福井の嶺北地方にも久しぶりの雪が降りました。
朝には曇りまで持ち直しましたが、地元の人間でも寒いと感じる天候にシッカリと防寒対策をして、嶺南地方にある三方湖へと出発です。
▲スタッフが集合した鯖江のつつじも雪化粧▲
▲高速道路からの景色も、まるで「水墨画」▲
1時間30分ほどで、本日の活動拠点となる「福井県里山里海湖(さとやまさとうみ)研究所」前に到着。
この施設は、ラムサール条約にも登録されている「三方五湖」のひとつ三方湖畔にあり、隣には道の駅も。
近辺には、世界的に知られる「水月湖の年縞」や、6000年以上前の漆器が発掘された「鳥浜貝塚」もあり、自然と人間との古い営みが悠久の昔から継承されてきた歴史を持ちます。
▲正面の建物が福井県里山里海湖研究所▲
車から降りると…
さ、寒っ!!
冬の日本海を渡ってきた北西の風が、湖の上を通ってビュービューと吹きつけます。
晴れ間の途中に、時折雪が舞うような厳しい天候ですが、幸い、このあたりには積雪はありません。
それでも寒さのことを考えて、今日は野外活動時間を短縮することになりました。
▲眼前にひろがる冬空の三方湖▲
▲カルガモ(左)もトンビ(右)も寒そ~ぅ(ToT)▲
▲近くの山際には梅の花もチラホラ▲
▲今日の会場はココだよーーっ!▲
そして寒風の中、駐車場には参加ご家族も到着!
里山里海湖研究所2Fの「観察棟」へと移動して、ストーブのたかれた室内での開会式へと進みます。
ここで、「一般社団法人Switch Switch」の阪野(ばんの)さんから、今日のプログラムについてのお話も聞かせてもらいました。
▲観察棟の入口の水槽で出迎えてくれた湖のお魚たち▲
コイ、フナ…パイプから顔を出すウナギにも気づいたかな?
▲開会式の様子▲
「SAVE JAPAN ブロジェクト」の目的やシステムも説明
▲阪野さんのわかりやすいお話▲
船屋の茅葺きにも利用されてきた「ヨシ」
今日の活動で刈る「ヨシ」は葦(アシ)とも呼ばれ、水辺によく見られるイネ科の植物です。
この季節には枯れていますが、夏から秋に花を咲かせ、3メートルを超えるような茎の先端にススキに似た穂をつけます。
ヨシは、水中の余分なリンやチッソを根から吸い上げるので、枯れて再び土壌に戻ってしまう前に刈り取ることで、アオコなどの原因となる水の富栄養化を軽減する効果があるとも言われます。
湿地や水辺の様々な生きものの隠れ場所などにもなり、生態系の多様性を助ける植物のひとつでもあります。
また、「よしず」や「茅葺き屋根」の素材にもなり、人々の生活を助ける素材としても活用されてきた歴史があり、里山的なヒトとの関わりで「循環型の環境」の一部を担ってもいました。
▲すぐ近くの若狭三方縄文博物館にある竪穴式住居(復元)▲
最近では“土屋根”説も有力のようですが
もしかしたらヨシの「茅葺き」だったかも?
そして、阪野さんが次に見せてくれたのが、三方五湖近辺で、今では幻の魚となってしまった「ハス」の写真。
今期の福井のプログラムのシンボルとも言える生きものです。
▲この地域で姿を見なくなって30年にもなる「ハス」▲
日本の漢字ではサカナへんに「時」と書きます
産卵期には、川を遡るハスたちで水面が盛り上がるほどだったのに、一体、どうして消えてしまったのか…
そこを切り口に、人と自然の関わりやバランスを“時を超えて”考えるプログラムにしていきたい。…それが、今年の目標のひとつです。
今日一日お世話になる、地元、鳥浜漁業協同組合の田辺組合長からもご挨拶をいただき開会式と事前のお話も終了。
いざ、湖畔での「ヨシ刈り」へ出発です!
▲水際での作業のためライフジャケットで万全の準備▲
実は寒さ対策にもなりました☆
▲途中で見つけた「ヒシの実」▲
▲そのカタチは、なんともフシギ!▲
▲由緒正しい(?)湖畔のヨシハラ!▲
ここが本日のメインステージ
移動先は、歩いて5分ほどの湖畔のヨシ原。
既に機械を使って刈られたエリアの先に、まだ手のつけられていない一帯が広がります。
思った以上の背の高さに驚きながらも、子どもも大人も総出で刈り取り体験が始まりました!
▲カマの使い方は「切る」よりも「引く」カンジだよ▲
▲みんなで刈り取っちゃえ~!▲
▲初めは少ない本数から慣れていこう▲
▲お父さんも水に入って奮闘中!▲
スタッフも含め、手とカマでの作業に慣れないメンバーも多い中、少しずつ…それでも着実に作業は進んで行きました。
刈ったヨシは、湖岸を少し上った細い道の脇に運びます。
5分…10分…20分…
時間が経つにつれ、そこに積み上げられてくる“ヨシ束”も高さを増してきます。
いつしか、子どもさんもスタッフも、慣れた手つきで刈り取り、束ね、運び上げる。…そんなムダのない動きを体得。
…気がつけば、かなりの面積が「更地」となっていたのでした。
▲だんだんと積み上がるヨシの山▲
▲終盤になっても軽やかな足取り▲
頼れる~☆
…ということで、寒さで予定より短くなった作業時間でしたが、その成果を写真で比較してみましょう。
定点でなくて恐縮ですが、この違い、わかっていただけますか?
▲ビフォア▲
▲アフター!!▲
いやいや、ナカナカのもんですよね?
正直、ここまで目に見えると、シッカリと達成感も感じられます。
寒風の中、頑張った甲斐もあったというものです。
みんな、アリガトーっ!!
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…そして、ここからはプログラム後半へ。
三方湖には、世界的にも珍しい「たたき網漁」という伝統漁法が伝わっています。
漁期は11月か12月から始まり、3月いっぱいくらいまで。
水面を竹竿でたたき、低い水温のため湖底で活性の低くなったフナやコイを驚かせて刺し網に追い込むという漁法です。
この漁で獲れたお魚を試食できるというスペシャルタイム。
会場は「観察棟」の1階にある和室。
体感温度「極寒」の外の世界から帰って来た私たちを迎えてくれたのは、くつくつと湯気を上げる、暖かい「アラ汁」の大鍋でした☆
▲胃袋をわしづかみにする湖魚料理の誘惑…▲
席に着くと、すぐに「アラ汁」と「お刺身」が目の前に登場。
味噌の芳醇な香り。
そして、豪華に盛り付けられたお造りの皿に、目も釘付けです!
▲シンプルな材料なのに、なんとも深い旨味!▲
▲この美しさと豪華さだけでも「目のごちそう」!▲
▲里湖の豊かさを味わう▲
▲いやぁ、ウマイ! びっくり! ご満悦☆▲
三方湖の「ゲンゴロウブナ」が素材の2皿。
まずは、料理の香りと色合いにノックアウト!
心配しがちな「くさみ」は1ミリもなく、お刺身の透明感あふれる旨味と歯ごたえ…加えてアラ汁の醸す滋味と優しさは感動もの!
もし「正直どうなの?」と先入観を持っている人でも、一瞬でファンになるレベルだと思えます。
本当に、未体験の皆さんには、これ、ぜひともオススメしたい!
そして、全員で最高のお魚を堪能した後は、本日のふり返りへ。
▲一人ずつ本日の感想を発表▲
▲各自の言葉に共感の拍手も起こります▲
それぞれの視点で、それぞれの感動や大変さを共有することで、自分だけでは気づかなかった発見もあります。
子どもは子どもの、大人は大人の、スタッフはスタッフの立場から語ることで、その場の全員に一体感も生まれるもの。
そして、最後にお話をしていただいたのが、鳥浜漁業協同組合の田辺組合長さん。
優しい雰囲気のお話の端々から、湖と自然、その恵み…そして、この地域全体への愛情が、ストレートに伝わってきます。
ご自分が子どもだった頃の思い出や、その時代には“ふつうの魚”だったハスのことなど…
お人柄とともに、その謙虚で地域愛に満ちた生き方そのものにも、心から敬意を表したい気持ちになりました。
▲田辺組合長さん▲
▲漁で使う大切な「刺し網」も見せていただきました▲
昔から伝わる道具は美しさも秘めていますね
そして、そろそろ本日のプログラムも終わりの時間。
最後は、湖にのびた桟橋に集合しての記念写真!
いつのまにか天気も回復。
日差しに包まれる中、朝の寒さが嘘のような心持ちで、無事に閉会を迎えることができました。
今回も貴重な時間をご一緒いただいた皆さんに、心より感謝です☆
▲今回も良い思い出になる体験でしたネ☆▲
<おまけ>
記念撮影の後、田辺組合長さんが桟橋の横から引きあげたこれ…なんだかわかりますか?
▲木の枝を束ねた道具?▲
正解は、これも昔ながらの漁に使う「粗朶(そだ)」です。
束ねた枝を水中に沈めておくことで、それに集まる魚たちを捕まえる方法を「粗朶漁(そだりょう)」や「柴漬け漁(しばづけりょう)」と言いますが、これはヒノキの枝で出来ていて、既に何年か使っているものだそうです。
この漁については、もしかすると7月のイベントで体験できるかもしれません。
ぜひ、それも楽しみにお待ちくださいネ!
▲また7月のイベントでは戻ってくるぞ~!▲
このイベントで得られたこと
また、湖と食や漁や生活とのつながりとともに、「ヨシを刈る」ことが、湖にどんな影響を与え、そのヨシを人々がどう利用し、循環型の地域文化を営んできたかを知ることが出来た。
・地元漁協の組合長さんのお話が、湖への感謝に溢れていて心に響いた。
やはり、当事者の方の語りには、他では得られない強さがある。
・湖魚の美味しさが、どんな言葉での説明よりも、環境や生態系の大切さを実感させてくれた。
・ヨシ刈りの作業は、なかなかの重労働だが、鎌の使い方を知ったり、湖畔の姿がスッキリして行く過程を体感することで、自分たちの行動が自然を変えるチカラを持つことや、達成感なども感じることが出来た。
参加者の声
- フナがおいしい。 ヨシをかるのがむずかしいけど楽しいこと。 ヨシの長さが長いことにびっくりしました。(子ども)
- 自分の体験した事が次の世代につながっていくのかと想像できた。 フナが非常においしく、楽しい一日を過ごすことができた。 地元の方の話が面白く、あきることが無かった。(大人)
- 組合長の三方湖再生にかける想いに感動した。(自然とくらしとの共生) (大人)
イベント実施結果
- 参加者数
- 3(大人2名 / 子ども1名)
- アンケート回答数
- 3(大人2名 / 子ども1名)
- 参加者満足度
- 100%
- 実施してよかった点
- ・今回の申込者は、キャンセルの皆さんも含めて全員がリピーターさんだった。
ある意味、福井での「SAVE JAPAN プロジェクト」に信頼を寄せてくださっていることを確認させてもらえて、スタッフとしても嬉しい。
・毎年、新しい地域や、そこにある土地や関係者の個性を活かした企画を創り上げることで、運営側のスキルアップにもつながると感じる。
「SAVE JAPAN プロジェクト」は、参加者の皆さんだけでなく、イベント実施団体や支援団体の地力を鍛えてくれる事業だとあらためて思えた。 - 実施して苦労した点
- ・寒波でうっすらと雪に覆われるような天気となり、風も強く、参加者の当日キャンセルが多かった。
前日に新型コロナ感染での参加断念のご家族もあり、少ない参加者での実施はとても残念だった。
この時期の日本海側の気候は安定しないが、「ヨシ刈り」のタイミング、伝統漁法の漁期など、“この季節ならでは”の内容を詰め込んだ企画だったので、その意味では致し方なかったのかもしれない。
とは言え、残念だった部分も含め、今回の経験も活かして今後につなげたい。
・良い自然体験のコンテンツをたくさん抱えている地域なので、一定の時間と予算の枠の中、どんな内容にするかを決定するのに検討を要した。
(ある意味、贅沢な苦労ではあるが…) - 特に寄付が活きたと感じた点
- ・地元食材の試食体験など、充実した内容にすることができた。
・2つの実施団体さんとタッグを組むことで、地元の活動と全体のプロデュースの両輪で企画・運営を行えた。
もちろん、予算の裏打ちがあればこその体制なので有難かった。
・活動や動画コンテンツ作成に予算を充当できた。
・告知のチラシを必要な数と質で作成し、十分な形で配布することができた。
- 主催・共催
- 一般社団法人環境文化研究所
一般社団法人SwitchSwitch
認定特定非営利活動法人さばえNPOサポート - 協力・後援等
- <協力>
鳥浜漁業協同組合
福井県里山里海湖研究所
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
<後援>
鯖江市教育委員会
美浜町教育委員会
若狭町教育委員会
福井新聞社 - 協賛
- 損害保険ジャパン株式会社