FUN FOREST!! ~美作の森で林業体験~②
レポート
岡山県内で唯一の林業に関する専門知識や資格を取得できる森林コースを開講している岡山県立勝間田高等学校。
その取り組み内容や林業に携わる楽しさを伝えようと、SAVE JAPANプロジェクトとして林業体験プログラムを企画し、第二弾を8月26日(土)に開催しました。
当日のスケジュール
10:45 プログラム開始
高校生による学校紹介と森林コースの説明、林業に関する座学
11:00 2グル-プに分かれ、
①ツリークライミング体験 と
②演習林の木々の解説・ドローン操縦体験
にそれぞれチャレンジしました。
12:40 昼食
13:15 午後からはグループが入れ替わり、
午前と違うメニューを体験しました。
14:55 プログラム終了
実施内容
参加申し込みをされた親子25名の皆さんと、勝間田高校の演習林がある津山市加茂町まで片道2時間30分かけてバスで移動。到着した演習林宿舎では8名の高校生と先生、講師の方々が出迎えてくれました。
宿舎内に入り、まずは「小中学生森林教室」というテーマで高校生たちによる森の座学が始まりました。最初は、学校の授業紹介です。
春夏秋冬を通じて学べる屋外プログラム、外部講師によるチェーンソー指導や雪中のスノーシュー森林探索など、森林コースならではの授業の魅力を伝えてくれました。

(外部講師による指導)
座学の後半は5月にも行ったクイズです。2回目の参加者も一緒に考えながら、『森の木を傷つけたのは誰?』など、 生徒がヒントを出しながら参加者の興味を惹きつけて解説をしてくれていました。

熊が樹皮を剥いだ様子の写真です。樹皮下のあま皮をなめるためと言われているそうです。
学校紹介とクイズが終わると、大きな拍手が生徒たちに向けられていました。
その後は2グループに分かれて、宿舎周辺の樹木解説とドローン体験、もう一方はツリークライミング体験を交替で実施しました。
■樹木解説
演習施設は、標高が高く、冷温帯という地域にあること、そのために岡山市内のような平地と違い、生えている樹木が違うことの説明がありました。
最初の木は「シラカバ(シラカンバ)」です。白っぽい樹皮が特徴で、樹皮は脂を含み着火剤として使われることもあります。

(シラカバの解説風景)
ウリハダカエデは緑色で胡瓜に似ているところから名前がついたことや、針葉樹でも葉っぱが落ちるカラマツの紹介、ここにはないがイチョウの木も落葉針葉樹の一つであることなど、樹木の魅力にどんどん引き込まれるような説明を生徒と先生方がしてくださいました。
隣へ歩いて紹介されたのは、シラカバと同じく冷温帯域を代表するブナです。昔から日本でも親しまれてきた木で、燃料や、どんぐりは食糧として利用されてきました。
馬酔木(あせび)は馬が食べるとふらふらする毒があること。スギはまっすぐ伸びるので、有用樹木として植えられ柱材などに利用されてきたこと、ヒノキよりも積雪に強い性質を持つことなどの説明がありました。

(杉の解説)
最後に、国内では一番大きい葉っぱをもつ朴木(ホウノキ)の葉はお皿としても利用されるとの説明があり、宿舎周辺を順に歩きながら進んだ樹木解説は終了となりました。

ホウノキの葉
■ドローン体験
なぜ、ここにドローンがあるのか?ドローンを使って何をするのか?ドローンを使うとどんなメリットがあるのか、値段はいくらくらい?そしてドローンを動かす際に一番注意しなければならないことは何か?について先生から説明があり、屋外に出てドローンの操作を体験しました。


子どもたちは、とても初めてとは思えないくらい発着をスムースに行い、皆上手にドローンを操っていました。
先ほど触れた、なぜ高校にドローンがあるのか。それは、ドローンを森林の測量に利用するためです。勝間田高校の演習林は面積が270haありますが、実際に測量をするととても大変な労力と時間がかかります。そこでドローンを使うと、たった15分ほどでデータの収集が可能になるのです。省エネで早く、正確なデータ処理が可能となるため、今や森林保全や林業の現場ではドローンを使うことがメジャーになっています。そのために高校生たちも実習として操縦の練習を重ねているのだそうです。
値段は安いもので5万円程度、自分で空撮をしたい人はそれで充分だそうです。本格的なプロ仕様の機種は120万円近いとのこと。測量に関する機能も十分に備えてあるため、勝間田高校でも1台保有をしているものを当日持ち出してくださっていました。
ドローンを動かす際に一番注意しなければならないことは何か?それは、雨です。
雨が天敵とのことで、晴れた日にしか飛ばすことはできません。当日も雨の予報が出ていたので、先生たちは雨雲の様子を見ながら指導されました。実際には14:30過ぎから雲行きが怪しくなり激しい雨も降って来たため、間一髪の差でドローン体験を終了でき、ほっとされていました。
■ツリークライミング体験
3名のインストラクターの方が指導をしてくださいました。
木に登る際に重要なヘルメットとハーネスの装着指導から始まります。
登る木の枝には既にロープがかけられていたので、子どもたちはヘルメットとハーネスの装着、そして登っていく際に重要なブレイクスヒッチという“上には上がるけど下には下がらない”という結び目の作り方を教えてもらいました。
ハーネスにきちんと接続し、足にはプルージックというロープの足掛かりを作って安全チェックの後に登り始めました。
腰のハーネスと足元にそのロープワークを接続しているので尺取虫のような感じでゆっくりゆっくり一歩ずつ登って行きました。
1m上がると視線がだいぶ変わります、さらに1m。1mと地上3mほどの高さまで登っていきました。そこからは、降りる方法の指導を受けながらゆっくり降りてきました。

登っていく様子

ロープの結び方を学ぶ親子
木から降りた子供たちは、木の枝にロープをかけるために使う2種類の道具(スローライン:枝にかける細いガイドロープ と 先端につける錘:スローウェイト)を使い、狙った枝めがけて投げる練習をしました。
両手で投げる方法、片手で投げる方法を自分で試しながら、意外と遠くまで投げるには、コツが必要なことを体験しながら学びました。

スローラインの両手投げにチャレンジする左の児童

(椅子に台にもなるオリジナルスタンド)
演習施設に到着してあっという間に4時間という時間が過ぎました。夏の終わりの1日に親子でとても貴重な体験ができたと思われます。少しでも森の役割、楽しさ、魅力が記憶に残ることをスタッフとしては期待します。最後に生徒たちが加工して作った台がプレゼントされ参加者たちは帰路につきました。
このイベントで得られたこと
豊かな森林を守るためにはその保全が必要であること。
また、林業においては先進的な機器も活用されており、時代に沿った手法を会得する必要があることが参加者と共有された。
林業を身近に感じることの少ない都市部に住む親子を対象に、高校生がその現場の取組みをレクチャーすることで、林業の重要性やカッコよさを伝え、ひいては進路選択のひとつにもできるような印象深い企画となった。
参加者の声
- 自然や日頃されている取り組みについて、生徒の皆さんや先生方がたくさん教えてくださった。 このような方々が自然を守ってくださっていたのだと、知ることができた。(保護者より)
- 貴重な体験が出来た。ツリーリングもきちんと専門の方が教えてくれながらだったので、大変楽しく過ごせた。(保護者より)
- 全てのプログラムが楽しめた! 普段体験できない貴重な体験ができました。 勝間田高校の方々や企業の方々がご親切でコミュニケーションを大切に接して下さったり、ご対応して下さった事、大変感謝しております。ありがとうございました。(保護者より)
イベント実施結果
- 参加者数
- 25名(保護者12名、子ども13名)
- アンケート回答数
- 10件
- 参加者満足度
- 90%
- 実施してよかった点
- 5月に参加した方も半数ほどいましたが、2回でプログラムの内容が異なっていたこともあり参加者の多くがとても高い満足度を感じてくれたようです。
ドローンの操作に関しては、実際に操縦をする子どもたちが楽しむことだけでなく、なぜ林業に置いてドローンを使用しているのかなどの解説も含めることができ、参加者の学びを深めることができました。
高校生たちも、森林クイズや樹木の解説などプログラムを検討する中で普段の学びを深めることができたとのことです。 - 特に寄付が活きたと感じた点
- 5月の開催に続き参加費無料とすることで、幅広い層の方へ案内が届き、参加につなげることができました。
前回よりも参加者が多くバス2台で向かうことになりましたが、それもSAVE JAPANプロジェクトの寄付が活きた大きな点でした。
- 主催・共催
- 岡山県立勝間田高等学校森林コース
- 協賛
- 損害保険ジャパン株式会社