サクラソウ草原保全活動
レポート
4月の山焼きに続いて、保全活動初夏の部は、サクラソウ、ユウスゲなどの自生地での草刈りです。
梅雨の晴れ間の当日は真夏日の気温となり、意識的に休息も挟みながら、午前・午後併せて3時間ほどの活動を行いました。
当日のスケジュール
10:00 受付、保全活動の意義、作業説明など
10:20 現地移動
10:25~12:00 鳩ヶ原 現場作業説明、草刈り作業
12:00~13:00 昼食・休憩
13:00 現地移動
13:05~14:30 草刈り作業、堰づくり実施内容
当日は初参加のボランティアの方もおり、作業前に蒜山地区の自然保護活動の意義を丁寧に説明してから作業を始めました。
山焼きにより、サクラソウの自生地は3倍に増えており、県内で一番広い自生地となっているとのことです。
しかし、毎年春に行う山焼きだけではすすきが伸びて一面すすきが原となってしまいます。昔は地元の人たちが牛と共に農業を営んでいたので、夏は草を牛に餌として食べてもらうために、毎日早朝3~4時にスタートして草刈りを行っていました。夕方も3時頃から夜にかけて草刈りをしていました。これによって、サクラソウやワレモコウ、ユウスゲ、ササユリなどの他にも、秋の七草であるオミナエシ、キキョウ、カワラナデシコなどが季節ごとに草原で見られていました。

かつての蒜山地区の草刈りは1軒が1日あたり250kgの草を刈っていました。飼料に25%、たい肥利用が50%、干し草用として25%を利用していたとのこと。旧川上村史によれば、江戸時代1808年の当時の上徳山村には、1025戸の家があり、実に1260トンもの草が蒜山で刈られていた計算となります。土地の面積で言うならば、1000haを超えていた計算に。このほかにも屋根に利用するすすきもあったため、大量のバイオマスを活用していたこととなります。明治になると牛を飼って稲作をすることで、人口も土地も増えていった記録があり、持続可能な土地の活用がこの草原地帯で展開されていたそうです。

この日の草原はというと、4月の山焼き直後は真っ黒い焦げ跡が見えた一帯も全面のグリーンに覆われ、まばゆい光景が広がっていました。
活動場所に移動し、サクラソウやユウスゲを残すための草の見分け方のレクチャーを受けてから、参加者全員での作業を始めました。

ユウスゲだけを食草とするフサヒゲルリカミキリは、日本固有種です。さらに日本ではここにしか生息していないために、地球上ここでしか見られない貴重な生物です。
ユウスゲの葉は、一見するとすすきの葉とよく似ているので、間違えて切ると困った事に。ユウスゲは根元が密集して生え、葉がややねじれ気味、すすきは、細長い葉の中央に縦の線が入ったようにV字の葉脈があるのでここが見分けのポイントです。
少々間違えてもユウスゲの成長が早いのでなくなったりはしないとフォローの解説を受け、参加者は少しほっとした表情ですすきなどの草刈り、草の移動に汗を流しました。
刈った草はフォークで突き刺し、水路となっている低地へ運びました。

<中央付近でねじれて見える細い葉がユウスゲ、右下でV字の細長く見える葉がススキ>
サクラソウは5月に咲くため既に花期は終わっています。草丈があまり高くなく、葉の表面にはしわが多い、縁にふぞろいの浅い切れ込みがあるという葉の特徴を確認し、気を付けながら周囲の草を鎌で刈っていきました。
刈った草は集め、草原に湿地を確保するための水路に敷き詰めていきました。

< 中央の広がって見える葉がサクラソウの葉 >
午後からは草刈りに加えて、水路から土砂の流出を防ぎたいという目的で3か所に堰を作っていきました。
堰の原料となる木は、4月の山焼きで燃えた木の幹や枝など直径15㎝くらいのものを選んで短く切りながら、番線で留めることで作業を進めていきました。

このイベントで得られたこと
●昔は、生活の一部となっていた草原の草の利活用により一定の自然環境が維持されてきていたが、今は暮らしが変わり、生活の流れとは別の活動に頼らなければ草原の生態系が維持されたり保護したい生物の保全にはつながらないことについて、今回の参加者と体験を通して理解を深めることができました。
●高校生、大学生、一般のボランティアが県内外から参加することで、山焼き・草刈りが継続して行われる状況が創り出されています。参加者の声
- 前回参加した時よりも効率よく作業ができた。(40代/会社員)
- 水路の堰の作り方を主催の方に教えていただいて参考になりました。(20代/学生)
イベント実施結果
- 参加者数
- 17名
- アンケート回答数
- 5件
- 参加者満足度
- 92%
- 実施してよかった点
・希少生物種のことをここまでの活動を通してあまり触れてこなかったため、「フサヒゲルリカミキリの生息のために必要な草刈り活動ができた」と感じました。
・ボランティア参加については、「草原の保全に関心のある学生が、実際の現場での動きを体感することができた」と思います。
- 実施して苦労した点
日影がなく、タープ等の準備もなかったので、ボランティアは直接日光を浴び続け、熱中症になる可能性もあった。
- 特に寄付が活きたと感じた点
- 岡山駅からの送迎バスの運行により、県外からの参加も可能となった。
- 主催・共催
- 蒜山自然再生協議会
山焼き隊 - 協力・後援等
- 岡山NPOセンター
- 協賛
- 損害保険ジャパン株式会社