SAVE JAPAN プロジェクト 2023-2024

レポート

手づくり石づみで守れ!
アカタン生きもの快適生活

2024年06月01日(土)実施
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レポート

南越前町のアカタン砂防堰堤群は、水害をきっかけに明治時代に赤谷川に造られた、人力の「石づみダム」群です。
そんな「Eco-DRR」(エコ・デーアールアール)の“聖地”とも言える場所で、生きものたちの快適生活を応援する石づみ体験に汗を流しました!

当日のスケジュール

8:30 受付開始
9:00 開会式~
9:30 活動場所(砂防堰堤)到着
    ~川の様子の観察
    ~周囲の生きもの観察
    ~石づみ体験
10:45 体験終了
    ~アカタン砂防堰堤の見学
    ~アカタン砂防堰堤のお話
11:10 駐車場へ移動
11:30 閉会式~アンケート
12:00 解散

実施内容

集合場所のリトリートたくらでは、8:30から受付開始。
まだ早朝の空気が残っていました。
活動場所は、横を流れる赤谷川の上流。「アカタン砂防堰堤郡」という、明治時代の人力の石づみダムがあるエリアです。
タイトル通り、自分たちの造る石づみで「生きもの快適生活」を実現することはできるかな?

お、そろそろ参加者の皆さんも集まってきたみたいですね。

※それぞれの写真をタップ(クリック)すると大きく表示できます

▲朝の天気は晴れ時々くもり▲

 

▲宝石みたいな朝露▲

 

▲緑の生い茂る赤谷川▲
この上流で川での石づみに挑戦です!

▲赤谷川の橋で見つけた、クモの巣に捕まったフタスジモンカゲロウ(かな?)▲
助けてあげたいけど…これも厳しい自然の掟

 

定時には全員集合! 開会式です。
このプロジェクトの仕組みや、運営団体やスタッフの紹介が終わると、活動現場への移動がスタート。
いくつもある石づみ堰堤(ダム)にはさまれた上流域に、車で移動します。

 

▲アットホームな感じの開会式▲
ケガや事故のないよう楽しみましょう

▲杉の森を抜けて上流へ▲

 

「奥の東堰堤」と呼ばれる大きなダムの近くに到着したら、そこから川岸へと降りて行きます。
そこにある、2つの小さな川が合流するポイントが、今日の活動場所。それぞれ、水の量も日の差し方も違います。

流れに挟まった、一見、中州のような川岸近くに集まっったら、今日の石づみの先生たちから、川にある石や岩が、流れと環境にどんな影響を与えるのか、簡単に説明をしてもらいました。

例えば、大きな岩にぶつかれば流れの勢いが緩むと同時に、ぐるりと回り込んだ水のスピードも、外側と内側では違います。
石を取り除いた後のくぼみや隙間も、虫や魚にとっては貴重なシェルターになるかもしれません。
流れの上を覆う木や植物の違いだけでも、きっと小さな生きのもにとっては「暑い」「寒い」「敵に見つかりづらい」などなど、生きるための条件が大きく変わってしまうのでしょう。

これまで思いもしなかった視点の話を耳にしながら、言葉に耳を傾けてくれた子どもたち。(もちろん大人のみなさんも)
自分以外の誰か(生きもの)の気持ちになることは、きっと環境やSDGsのことを考える時の大切な基盤になってくれますよね。

▲舗装された林道から川岸へと降りる▲
足元は湿気を含み、落ちた葉っぱでぐっと沈む感覚

 

▲鮮やかな緑と涼やかな流れ▲
あちこちで、カジカガエルの美しい声が空気に浸みわたるよう…

 

▲先生たち(手前)のお話で、川と石の関わりを学ぶ▲

 

▲活動場所は、手前と奥の2本の川▲
奥の方が日陰が多く、川底の深さの変化も大きそう…

 

じゃあ、そろそろ川に入ってみのしょう。
まずは、タモアミを持って生きもの探しから!
石を動かしたり、積み始めてもOK!
その時は、石の裏を見て、虫やタマゴや生きものの痕跡がないかの観察も忘れずに!

 

▲一斉にハンターモードに突入!?▲

 

▲この石の下にナニかいるかも?▲

 

▲次はあっちの川岸に…▲

 

▲このあたり、アヤしくないか?▲

 

▲上流から下流まで広がって生きもの探険▲
その一方で、真剣に石づみを始めた子供さんも☆

 

▲ジャブジャブ歩くだけでも楽しいよネ▲

 

▲お!そっちはどう?▲

 

▲さぁ、出ていらっしゃい☆▲

 

ほどなく、期待以上の生きものたちが集まってきました!
ムシ、クモ、魚、カニ、カエルなどなど…
ここで一部をご紹介。

 

▲スタッフが川岸の穴で見つけたアナグマくんのお姿▲
お騒がせしてゴメンね、そりゃ驚くよねぇ…汗

 

▲トノサマガエル2種▲
左の方、茶色だからわかりづらいかな?

 

▲みんなに大人気だったアカハライモリ▲
ただし、弱いドクもあるから手洗いは忘れずにネ
おなかの写真は、また後ほど

 

▲水の上で捕まえたイオウイロハシリグモ(…だと思う)▲
網を張らず、ムシやオタマジャクシなどもエサにするとか

 

このあたりから、本格的な石づみタイムがスタート。
「こうかな?、あぁかな?」そんな自分の考えで石をつんでいくことで、生きもの探しとはまた別の楽しみに気づきます。
ただの水遊びとはひと味違う、水の流れと会話しながらの時間が流れていきました。

 

▲うん、気がつくとハマっちゃってる作業だよね☆▲

 

▲全身を使って、繊細に置く!▲

 

▲大っきいのいくよーっ▲

 

▲わからないことは遠慮なく先生に質問だ▲

 

▲上から眺めると流れの違いもわかりやすいよね▲

 

▲こいつはナカナカの力作じゃないの☆▲

 

▲そろそろあちこちで完成の声が▲

 

▲2つの川で完成した石づみたち▲
個性あるなぁ

 

石づみ体験の時間も、これにて終了!
水から上がる直前まで、こだわりの微調整をやり遂げた参加者の皆さんもいたくらいに、実はこの活動、とっても面白かったみたいです。(大人の皆さんにも…)

ここで今一度、恒例の“生きもの観察”の時間。
子どもたちがどっと集まってきました。

 

▲バケツの中はお宝(生きもの)でいっぱい▲

 

▲アカハライモリのおなかとアブラハヤ(かな?)▲

 

▲カジカガエルとサワガニ(石の影)▲
こんな平べったい小さなカエルが、あんなにいい声で鳴くんだなぁ~

 

▲最後はそれぞれの居場所にもどしてあげて「元気でねー」▲

 

さぁ、石づみ体験は完了ですが、今日はこれだけではありません。
石づみ大先輩の偉業! アカタンの堰堤を見学しますよ。
さぁ、こっちこっち!!

少し歩いた先にあるのが、アカタン砂防堰堤群のひとつ「奥の東堰堤(おくのひがしえんてい)
そのダムの上に立ちながら、「田倉川と暮らしの会」で、日々アカタンの石づみの“世話”をしている伊藤さんのお話を聞くことができました。

(写真には撮れませんでしたが)石の間から顔を出したアオダイショウに子どもたちも大興奮。
明治時代、地域の皆さんが造り上げた石づみダムが、水害から人々の生活を守るとともに、生きものたちの棲みかも守っていることを実感です。
そしてこれが、今年の福井の活動のテーマでもある「Eco-DRR」の基本なんですよね。

さらに移動して、今度は「松ヶ端堰堤(まつがはなえんてい)を下から見学。
それぞれの石や岩の大きさに圧倒されながらも、ひとつの石を囲むように6~7個の石を置いていく技法や、水通し(川の本流を通すルート)は岩盤のある部分を選ぶことで強さを維持する工夫をしてあることを学べました。
また、アカタンの石づみは、中に土を入れないことで、水の勢いを削ぎながらも、水自体は通すとのこと。
これには参加者の皆さんだけでなく、スタッフもビックリでした!

伊藤さん、貴重なお話だけでなく、石づみの草取りや見回りの活動にも本当に頭が下がります。
ありがとうございました。

 

奥の東堰堤を上から見学▲

 

▲にこやかにお話をしてくれた伊藤さん▲ 
でも自然相手のことだけに、大きなスケールのお話でした

 

▲こちらは松ヶ端堰堤
これを人力で完成させたなんてスゴい!!

 

▲松ヶ端堰堤の水通し▲
岩盤のある場所に水を流すことで強度を保つそうです

 

▲松ヶ端堰堤をバックに記念撮影▲
ちょっとだけ歴史と一体になった気分かも?

 

お疲れさまでした。
これでメインイベントは無事終了。
駐車場(集合場所)へと戻って、閉会式までの間にアンケートをお願いしますね。

おかげさまで今回のイベントも、盛りだくさんで充実した時間となりました。
閉会式では簡単な振り返りとともに、次回予定しているシンポジウムの告知もさせていただきました。
4月の石づみを指導していただいた金子先生はじめ、今回参加のご家族の皆さんにも、クロストークに登壇していただく予定です。
ぜひ「手づくり石づみの底力」や「Eco-DRRの奥深さ」を会場で共有しましょう!

あと、今回、「福井のSAVE JAPAN プロジェクトのあゆみ」をチラシデザインでふり返るペーパーもお分けしました。
この公式サイトへの2次元コードも掲載してあるので、そこから過去のレポートや、他の地域の活動なんかにも興味をもってもらえると嬉しいですね。

ではでは、また次回☆

 

▲一生懸命アンケートに答えてくださる姿には感謝で一杯▲
親子で会話しながらの様子にもほっこりです

 

▲閉会式では、次回シンポジウムのおしらせも▲

 

▲閉会後に話しかけていただいて会話が弾むことも▲
「実は今日まで、ずっと耳にしてたカジカガエルの声、鳥だと思ってました」
…とのこと☆ 澄んだ鳴き声ですもんね、わかります~

 

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<おまけ>
川から上がる直前に、積んだ石づみの石の上でくつろぐ(?)カジカガエルを発見!
これこそ「Eco-DRR」の実践例…と言えるのかも?笑

 

▲気に入ったのなら、ぜひこれからも使ってやって~▲
m(_ _)m

 

 

このイベントで得られたこと

・川の中では石や岩が流れや光に変化をもたらし、虫や魚をはじめ、多様な生きものたちが快適に生きるための大切な要素になっていることを学べた。

・川に入っての生きもの探しで、棲息する魚やイモリ、カエルなどと直に触れあい、自然界の石や岩が貴重な住処を提供していることを体感できた。

・自分たちが石づみをすることで、身近な活動が豊かな自然環境の実現を手助けできることを実感するとともに、アカタンの堰堤群を見学することで、Eco-DRR視点のヒトと自然との係わり方や可能性も知ることができた。

参加者の声

  • 石づみをして、ダムを作りました。右と左に作って、ながれを速くしました。ななめになっている石をおいたら、すべりだいになりました。ダムを作ったことが一番楽しかったです。(6年生)
  • 川にも、ながれがはやいところとおそいところがあるのがびっくりしました。(3年生)
  • カニよかった 魚もよかった 水冷たかった。(幼稚園・保育園)
  • 水の中だけでなく川のそばの林の中にも生き物がいっぱいいたことがおもしろくて印象に残りました。石積みのえんていが思っていたよりも大きく、おどろきました。とても、きれいな景色で、管理されている方に感謝です。ありがとうございました。(40代)
  • 自然だけでなく、ダムの説明があり、自然との共存を意識することができました。子どもが自由に川で活動できて良かったです。(30代)

イベント実施結果

参加者数
37(大人17名 / 子ども20名)
アンケート回答数
37(大人17名 / 子ども20名)
参加者満足度
88%
実施してよかった点
・堰堤と堰堤の間の、ちょうど良い水量・流速のエリアを選ぶことで、生きもの観察も石づみ体験も療法満喫することができた。
 体験時間をたっぷりめに使ってもらえたことで、置いた石が、水の流れや生きものの環境にどう影響するのかも体感してもらえたと思う。

・田倉川と暮らしの会の方に話していただきながらの堰堤見学は、現物(石積み)の素晴らしさを目にしながらということもあり、ほとんどの子どもも大人も興味深く耳を傾けてくれた。
 「Eco-DRR」を皮膚感覚でも知識の上でも感じてもらえる良い機会になったと思う。

・魚とは出会えないかもと思っていたが、ドンコやアブラハヤなどの魚たちの顔も見ることができた。
 アナグマやアオダイショウ、色々な虫やカエルたちも見つけられて、予想以上にアカタンの生物多様性を感じることができた。

・水に入ること自体の“特別感”もあったが、新緑の緑の下の渓流での活動や、途切れなくアチコチに響いていたカジカガエルの鳴き声に包まれて、それだけで心が洗われるような時間になったと思う。
実施して苦労した点
・安全性、作業のしやすさ、水量や流れの多様さなど、パランスの良い活動場所の選定と、集合場所からの移動方法に苦労した。

・石づみ体験と、「Eco-DRR」の意識づけや関連性をどう落とし込むかでプログラム構成にも気を配った。
 その意味で、アカタンの砂防堰堤見学はとても適していたと思う。
特に寄付が活きたと感じた点
・現地で実際に石積みの管理や補修などをしている講師をお呼びして、貴重な体験を語ってもらえた。

・動画コンテンツ作成に予算を充当できた。


・告知のチラシを必要な数と質で作成し、十分な形で配布することができた。
主催・共催
一般社団法人 環境文化研究所
田倉川と暮らしの会
福井市立郷土歴史博物館
認定特定非営利活動法人さばえNPOサポート
協力・後援等
<協力>
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
 
<後援>
鯖江市教育委員会
福井新聞社
協賛
損害保険ジャパン株式会社