SAVE JAPAN プロジェクト 2023-2024

レポート

福井 いのち いしづみ
いきものシンポ

2024年07月06日(土)実施
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レポート

4月、6月と「石積み」を体験し、環境と生き物と人の関わりを肌感覚でもでも吸収してきた今期のプログラム。
私たちの行動がどんな未来を創り、生きものたちや自然にどんな影響があるの?
ちょっと背伸び(?)をして「いしづみシンポジウム」を開催しました!

当日のスケジュール

13:00 受付開始
13:30 シンポジウム開会
    ~損保ジャパン株式会社
       福井支店長 ご挨拶
13:40 キーノートスピーチ
     講師:金子玲大 氏
14:30 ~休憩~
14:40 クロストーク
15:20 シンポジウム閉会
15:45 石積みの村を現地視察(散策)
17:00 解散

実施内容

これまで、自然体験イベントがほとんどだった福井のSAVE JAPAN プロジェクトですが、今日のシンポジウムは少し毛色が違います。
…とは言え、ムズかしい発表やら議論というよりも、もっと柔らかなプログラムなので大丈夫。
子どもたちも参加して、この春からみんなが体験した石積みを核に、もっと広い知識や視野の「お話」に耳を傾け、お互いの思い出を語り合ったりする時間を過ごします。

自分たちのアクション(体験)が、生きものの生活防災環境保全「つながっている」ことを、あらためて感じてもらえるといいな。…そんな思いの詰まった企画です。

会場となる越廼(こしの)公民館は、4月に石積み体験をした越前海岸エリアに位置しています。
シンポジウムの後には、自分たちで積み上げた、あの「石積み」の様子も見学予定!
楽しみです。

※それぞれの写真をタップ(クリック)すると大きく表示できます

▲会場準備のため鯖江を出発するスタッフ▲
この時は晴れ間も見えていましたが…

▲なんと30分後にはこの豪雨!!▲
車のフロントガラスに現れた“水の模様”の激しさ、わかりますか?

▲移動中に車から見た大雨の越前海岸▲
「雨に煙(けぶ)る」…と言うよりは、「豪雨に打たれている」カンジ

到着した公民館は、地区の中心エリアに建つ複合型の施設。
まだ雨脚は衰えないですねぇ…(ちょっと心配)

▲清潔感のある会場の玄関▲
荒天のため、いつもの「のぼり」は、この後、傘立てに設置しました

▲最上階の大ホール前で受付▲
壁の大きな油絵も越前海岸の風景ですね

▲会場の窓から眺めた日本海の風景▲
港の「イカ釣り船」もご当地感たっぷりです

お昼を過ぎたあたりから雨も少しずつ上がってきて、スタッフもようやく「ホッ」としました。
開始15分前あたりになると、参加者の皆さんも次々と来場しはじめ、そろそろシンポジウムのスタートです!

少し暗めの会場では、4月と6月の「石積み体験」の写真をふんだんに盛り込んだ、オープニングムービーが口火を切ってくれました。

▲ムービーでよみがえる石づみ体験!▲

▲損保ジャパン福井支店の生田支店長さまからもご挨拶いただきました▲
元気づけていただけるお話、ありがとうございました

そして、「キーノートスピーチ(基調講演)」で登場したのは、4月の体験イベントの監督役も務めていただいた、(一社)石積み学校理事の金子玲大(れお)先生!
日本全国はもちろん、世界を股にかけて活動する「石積み」のプロフェッショナルです。
たくさんの写真や図解を使って、今期のテーマ「Eco-DRR」との関わりや、石積み文化の普遍性・継承と言った大きな視点でのお話にも興味を引かれました。

気取らない雰囲気も魅力の金子先生

▲沖縄の石垣島で魚の漁にも使われる「魚垣」▲
隙間から稚魚などが逃げられることも生態系には大事なんだなぁ

金子先生のお話が終了後、10分ほどの休憩を挟んで、次は子どもたちやご家族も交えての「クロストーク」です!

▲イスも円形に配置し直して準備完了!▲

▲本日のクロストークメンバーの皆さま

内側のイスのトークメンバーを囲む形で、他の参加者の皆さんもぐるりと着席。
この形は会場の一体感も高まります。
石積み学校の金子先生をはじめ、越前海岸の水仙畑の歴史的景観の保存と活用に関わる藤川さん、生きものの達人として久保田さん、そして、4月と6月の体験イベントに参加してくれた2つのご家族のみなさん。
コーディネーターは、環境文化研究所の田中さんが務めます。


まず越前海岸の水仙畑と石積みの歴史について、藤川さんからお話があり、金子先生や久保田さんからも、石積みや生きものからの目線で、興味深いトークが続きます。
なるほど、元々は田んぼとして造られた農作地が、江戸時代には水仙畑としても使われるようになったのか。

イベントに参加した子どもたちや、ご家族からの感想からも、みんなが素直に活動を楽しんでくれたことや、石積みの達成感にが伝わってきました。
最初は「生きもの目当て」で参加したはずなのに、イベントの後、自分のお家でも「石積み」を始めたくらい“開眼”した男の子。
川での「石積み」を黙々と進めていたお兄ちゃんと、生きもの探しに熱中して隅々を探険した弟くん、そしてそれを見守るご家族同士の“ステキな関係”

金子先生も初体験だったという、就学前の子どもたちにも参加してもらった今期の「石積みイベント」でしたが、皆さんに、普段では関われない貴重な時間を提供できていたなら、本当にありがたいです。

▲越前海岸の水仙畑についてお話しする藤川さん▲
ここの「石積み」は人々の歴史や風土と一緒に歩んできたんだなぁ…

▲「ぐり石」がしっかりしてれば、4月に造った石積みも300年くらい持つとか▲

▲床に広げられていたのは、ハヤブサが捕食した記録のある鳥たちの絵▲

▲久保田さんからは生態系や環境についての話題も▲

▲石積みしながら、川の水の変化や生きものへの影響を考えていた“お兄ちゃん”▲

▲はにかみながらの“発表”でも「生きもの大好き」はシッカリ伝わったよ☆▲

▲お父さんからも、その後の兄弟の“変化”のご報告が▲
※左端はコーディネーターの田中さん

▲スゴーい! お家に帰ってからも「石積み」造ったんだ!▲

▲お母さんによれば、大好きな「生きもの」への興味の横に▲
もうひとつ「石積み」への興味ができちゃったみたいです

やっぱり、いろんな体験をすることで、いろんな「引き出し」が出来上がるものなんでしょうね。
スタッフも、参加者の皆さんの率直な(その後の)お話が聞ける機会は貴重&感激でした。
ありがとう☆

▲シンポジウム後にみんなでガッポーズ!▲
集まって話すことも大切だね~

さてさて、ここで「シンポジウム」は一段落!
第2部は、4月に積み上げた「石積み」の見学です。

午前中の大雨も無事に止み、お天道さまも顔を出してくれました。
公民館をあとに、まずは現地まで移動しましょう!


▲青空をバックに外から見た越廼公民館(左の建物)▲
平成の合併後も、地域の中心施設として頑張ってるそうです

▲久しぶりにおじゃました「越廼ふるさと資料館」の駐車場▲

▲晴れてきたおかげで日よけグッズも大活躍!▲

▲大雨の余韻<1>▲
用水路の流れの激しさ、伝わります?

▲大雨の余韻<2>▲
舗装のひび割れから、水が吹き上がってました

 

▲途中の温室には、水仙の球根がこんなに!▲

 

▲道中、立ち止まった金子先生▲
右上の石の飛び出し方が気になっている様子

 

▲石壁の奥を流れる水が石の膨らみの原因の可能性があるとのこと▲
放って置くと、石が崩れてしまう場合も?

 

暑さの中、坂を登ってたどり着いたのは、4月に石積みにチャレンジした、あの畑!
雨が上がったばかりで、地面は湿地状態。
苦労して積んだ石積みは、果たして無事なのか!?(ドキドキ)

 

▲左に降りた先が4月の「現場」▲
4月のイベントレポートはこちらから

 

「水路チーム」の石積み▲
少し崩れてはいたものの、原型はシッカリ留めていました!

 

▲一方の「石垣チーム」の作品はと言うと…▲

 

▲おぉ! これはビクともしてないぞ!!▲

 

石積みの無事な様子に嬉しい気持ちになるとともに、あらためて自分たちの活動のポテンシャル(可能性)にも気づかされました。

ちょうどそんなタイミングで石垣の上に止まったシオカラトンボ1匹☆
なんだか、昆虫たちからも認めてもらえたみたいで嬉しかったぁー!

 

▲上からと後ろ斜めからのシオカラトンボくん▲
7月のカジカガエル同様、こんなことがあると気持ちがアがります☆

 

ここで、あらためて金子先生から「しっかり役割を果たしてましたね。」とお褒めの言葉。
みんなも胸を張った瞬間でした。

 

▲現場を離れる前に金子先生のお話に耳を傾けました▲

 

▲足元の草が、機械で刈った後のように同じ高さで切れています▲
これ、実はシカが食べた後だそうです…

 

▲そのすぐそばにあった、イノシシの「ぬた場」とおぼしき「ぬかるみ」▲
シカやイノシシの獣害にも晒されている越前海岸なんですね

 

▲日本海を背にあらためて記念撮影!▲
ちょっとドラマチックな空です

 

石積みの「今」の見学も終わり、駐車場に帰ったところで、簡単な閉会のご挨拶。
午前の雨の様子に気を揉んでいたのが、まるで嘘のような天気の中、大団円で今期の福井のプロジェクトも幕を閉じました。

 

▲事故もなく解散までたどり着きました▲
今日だけでなく、4月からのイベント全ての大団円です!

 

「Eco-DRR」という、まだそこまで一般では使われていない言葉を、イベント体験の中で感じてもらおうと頑張った福井のプロジェクト。
幸いなことに、「越前海岸の水仙畑」「アカタン砂防堰堤群」を造り上げた先人達の歴史が、「Eco-DRR」の実践例として、ずっと背中を押してくれていたようにも感じています。

人力の石積みは、人の生活と自然の営みをつなげ、絶妙なバランスを保ちながら様々な“命”を守ってきました。…それを参加者の皆さんにも、この1年の体験の中で、少しでも感じてもらえたとしたら嬉しい限りです。


では、また次の機会があることを信じて!

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<番外編>
イベントの行き帰りで出会った、植物や虫たちをいくつか掲載しておきます。
4月のイベントとほぼ同じフィールドではありますが、雰囲気や季節を想像する手がかりになれば幸いです。

 

 

▲ヒメヒオウギスイセン▲

 

▲石垣の上を散歩中のニッポンマイマイの仲間(?)▲

 

▲名残のアジサイ▲

 

▲どうやら(生け花やアレンジメントで使う)カラーの実かも▲

 

▲キバネオオベッコウ▲
飛んできた時はアシナガバチかと思いました
クモの天敵だそうです

このイベントで得られたこと

・キーノートスピーチ(基調講演)では。日本全国や海外を含めて「石積み」の歴史や意味、環境負荷や防災・減災の可能性などを広く知ることができた。

・体験イベントが、未来の環境づくりや防災・減災に「どうつながっているのか」を、先生や達人の話を聞きながら、あらためて理解する場を作ることができた。
 通年のテーマである「Eco-DRR」との関わりを意識強化できる内容だった。

・子どもたちや保護者が、思いを発表して交流する機会を共有できた。
 参加者同士の共感も大切だったが、運営側や講師サイドでも、あらためて参加者の生の声を耳にすることができ、事業の意味(もちろん反省点も含めて)を再確認し、ふり返る貴重な機会となった。

参加者の声

  • 金子さんの話がしらない事ばかりでびっくりした。(5年生)
  • なにかをはっぴょうしたりすること(が楽しかった)。(3年生)
  • 子どもたちが自然体験を通して、学校で学んだ事や知識と実体験を結びつけて考えられるきっかけとなり、学びが深まっているなと感じた。まだ環境の為に、というより「楽しい体験」というイメージでとらえていると思うが、確実に、視野を広げるきっかけになってくれていると思います。(30代)
  • 石積みが世界で取り組まれていることを知った。海や川、山、住宅などいろんな所で活かされているのだと思いました。(40代)
  • 石積みのメリットを沢山知る事が出来た。今後、川や石積みをもっと関心を持って見れる。(30代)

イベント実施結果

参加者数
19(大人14名 / 子ども5名)
アンケート回答数
19(大人14名 / 子ども5名)
参加者満足度
92%
実施してよかった点
・アットホームな雰囲気での意見交換の場を用意できたと思う。
 子どもたちの素朴な意見も含め、予定調和でない内容は、このプロジェクトの本質と相性が良かったとも感じた。

・4月に自分たちで積み上げた「石積み」の場所を再訪し、無事に“役割”を果たしていることを確認できた。
実施して苦労した点
・特に「クロストーク」を、どうやってみんなが一体感を共有できる時間にできるかを、直前まで試行錯誤した。
 当初はステージ上でのやり取りをイメージしていたが、参加者数や会場の空間などから判断し、ステージではなく、他の参加者と同じフロアに円座をしつらえる形に変更。正解だったと思う。

・参加者数が少なめだった。
 自然体験プログラムではないこともあり、元々、ターゲットを大人の年代に想定していた部分はある。
 防災関係組織のメンバーや、環境保全に関わる皆さんもお誘いしていたが、スケジュールの関係等で参加が難しいとのお返事も多かった。
 「Eco-DRR」という言葉の普及度も高くはなく、イベントの魅力を遡及し切れていなかったのかもしれない。
 朝からの激しい雨もあり、お申込のあった複数の方から、当日キャンセルの連絡があったのも残念だった。

・シンポジウムの話の内容に、少し飽きてしまった子どもたちもいた。
 金子氏によるキーノート(基調)スピーチは、写真なども多く、時間もコンパクトで興味深い内容だったが、さすがに低学年以下の子どもたちには難しかったかもと思う。
 ただ、その後のクロストークでは、自分たちの体験活動を思い起こしながら、“当事者”として参加&発言してくれた子どもたちも多く、正直、胸をなで下ろした。
特に寄付が活きたと感じた点
・講師や現地の関係者を招いて、貴重なお話をしてもらえた。

・動画コンテンツ作成に予算を充当できた。


・告知のチラシを必要な数と質で作成し、十分な形で配布することができた。
主催・共催
一般社団法人 環境文化研究所
福井市立郷土歴史博物館
認定特定非営利活動法人さばえNPOサポート
協力・後援等
<協力>
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
 
<後援>
鯖江市教育委員会
福井新聞社
協賛
損害保険ジャパン株式会社