SAVE JAPAN プロジェクト 2024-2025

レポート

しめっちカフェ 自然によりそう地域づくり~グリーンインフラの未来~

2025年05月24日(土)実施
  • その他植物
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  • 市街地・公園
  • 昆虫・その他
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  • 里山
  • 高原

レポート

自然を残しつつ、よりよい地域づくりに取り組むためにはどうすべきかについて、ゲストスピーカーの鎌田磨人氏が自身の著書『自然によりそう地域づくり』を基に報告が行われ、続いて参加者との質疑応答による活発な意見交換が展開された。

 

グリーンインフラ(緑の社会基盤)の意義

生態系は、人々に便利な暮らし・安全・良い環境・活力を提供している。グリーンインフラとは、人々がそのような重要な役割を担う生態系が公共財であることを認識し、生態系が提供するサービスが持続するよう、維持管理のためにコストを払いながら、資本を運用していく仕組みのことである。「誰がどのようにコストを払うのか」がグリーンインフラについて考えるうえで重要な課題となる。

 

地域での協働による自然資本の自律的管理

自然を活用し、維持しながら地域づくりを進めるには、既存の価値と意思決定の仕組みの見直しが重要である。広島県北広島市の雲月山の草原に関連する取り組みが、その具体例として示された。従来の行政主導の管理方法を改善し、地域の住民や小学校、さらに地域外からのボランティアなど、多様な主体と連携して管理することにより、雲月山の新たな価値やアクティビティの創造を可能にした。

 

協働の経験則のパターン化と共有

さらに重要なのは、こうした「地域における協働による自然資本の自律的管理」の方法を、共通のパターン(経験則)として他地域とも共有することである。地域での協働から得られた知恵や工夫を、パターン・ランゲージという手法によって言語化・形式化し、誰もが活用できる汎用的なとして提示している。これにより、様々な地域で応用され、取り組みの広がりが実現する。

 

今後の取り組み

地域での協働による自然資本の自律的管理方法を、経験則として他地域や上位の制度に活かしていく仕組みを「ダウンアップ」という。従来、自然や地域づくりに関わる戦略や計画は、国から都道府県や市町村へ、そこからさらに自治体へと上から下る「アップダウン」という仕組みで進められてきた。今後は、アップダウンの仕組みをダウンアップの仕組みと融合させることで、より持続的で地域に根ざしたグリーンインフラの構築することが重要である。

当日のスケジュール

・鎌田磨人さんによる事例も交えてのお話

・鎌田磨人さんと中村太士さんと対談

実施内容

気候変動の影響もあって、災害が激甚化・頻発化している昨今、湿地の持つ減災防災機能も注目されてきており、遊水地や水田などの人工的な湿地もグリーンインフラとしての価値が認められ、同時に生物多様性を育む空間としても、自然資本としての重要性が理解されるようになってきました。しかしながらその機能の発揮・維持のためには人間による保全や利活用が大切で、地域での協働をいかに進めるかが鍵となります。その現場に入り込んで研究・実践されてきた鎌田さんらの経験をもとに、望ましいプロセスやデザインについてお話いただき、また後半では中村さんと今後のグリーンインフラのあるべき姿について対談していただこうと思います。

お話 鎌田磨人さん(徳島大学教授) + 中村太士さん(北海道大学名誉教授)

<ゲスト プロフィール>
鎌田 磨人さん(徳島大学 教授)
1990年3月広島大学大学院生物圏科学研究科修了(学術博士)、1990年4月徳島県立博物館学芸員、1998年4月徳島大学工学部建設工学科助教授、2008年4月徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部教授を経て、2017年4月より徳島大学大学院社会産業理工学研究部教授。
2025年3月、「自然によりそう地域づくりー自然資本の保全・活用のための協働のプロセスとデザイン」(共立出版)を共著で出版。
https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10123414.html
日本景観生態学会会長(2020年1月〜2023年12月)、International Consortium of Landscape and Ecological Engineering (ICLEE)会長(2024年10月〜)、生物多様性とくしま会議共同代表など歴任。今は猫たちに遊んでもらっているときが至福の時間とのこと。1961年徳島市生まれ。

中村太士さん(北海道大学 名誉教授)
1983年北海道大学大学院農学研究科林学専攻修士課程修了。1984年北海道大学農学部林学科砂防工学講座助手。1987年農学博士。1990~92年オレゴン州立大学に留学し生態系管理学を学ぶ。森林と川のつながりなど、生態系間の相互作用を土地利用も含めて流域の視点から研究、北海道大学大学院農学研究院森林生態系管理学研究室教授を2024年3月退官し名誉教授。
生態学琵琶湖賞、尾瀬賞、みどりの学術賞受賞、紫綬褒章受章。中央環境審議会専門委員、自然再生専門家会議委員、釧路湿原自然再生協議会会長など歴任。主な著書に「水辺域管理-その理論・ 技術と実践」(古今書院)、「川の環境目標を考える」(技報堂)など。冬季の伐倒・玉切り、そして薪ストーブの火を見ながら一杯やるのが楽しみ。夏は嫁に連れられて釣り。1958年名古屋市生まれ。


■Youtubeより当日の講演内容がご覧いただけます

このイベントで得られたこと

実際に鎌田さんが地域の方と一緒に取り組んだ事例を聞けたことが一番の成果であった

参加者の声

  • 都会と地方では参画する手法(ボランティア、NPO)がことなる
  • 廻りを巻き込んで行動すること
  • 地域住民のコミュニティの入り方
  • 事前に鎌田さんの著書を読んでから現場にいくともっと有意義な質問ができた
  • 鎌田さんがお話された中で、地域で自然保全を展開するためのプロセスや重要な要素についての解説が分かりやすかったです。鎌田さん自身もおっしゃっていましたが、北海道の自然環境と人との関わりは、本州のそれとは状況が異なる点もあるため、課題や重視すべきポイントも違ってくるとは思うのですが、その点については中村さんからのお話でフォローされていたと感じ、全体的にバランスのよい構成で、個人的にとても意義深い時間となりました。ありがとうございました。

イベント実施結果

参加者数
20名
アンケート回答数
15
参加者満足度
90%
実施してよかった点

・鎌田さんと一緒に地域に入った関係者の方が来ており、その方からも話を聴けたり、中村さんからも総括的な話をきけたことがよかった

実施して苦労した点

特になし

特に寄付が活きたと感じた点

鎌田さんと中村さんをゲストスピーカーに迎えられたこと

主催・共催

主催:石狩川流域 湿地・水辺・海岸ネットワーク(しめっちネット)

共催:特定非営利活動法人北海道NPOサポートセンター

協力・後援等

協力:特定非営利活動法人日本NPOセンター

協賛
損害保険ジャパン株式会社